「妊娠しましたって言う」


「言って?」


「言う。とにかく言う。言えば、前に進める気がする」


美希が大げさに、ため息をついた。


「あいつにいっぱい文句言って、それでこの子を産む」


「だから、無理だって」


そう言って美希は、顔を覆った。


「ちゃんと親にも、認めてもらう。この子に父親はいないけど、ちゃんと育てる」


「菜々美・・・」


「堕ろすなんて・・・そんなのダメ」


「この子が将来、どうしてお父さんがいないのって聞いたら?」


「そんなの気にならないくらい、いっぱい愛情注ぐ」


どんな形であれ、私の中に宿った命。


それはいつの間にか私の中で、一番大切なものになってた。


産みたいって、そう思ってた。