「今この子を産んであげないと、この子は一生この世に産まれてこないって。だから大学辞めるときも、なんか切なくなったけど、後悔はしなかったよ」


「そっか」


「私、今までにないくらい幸せ。だから、そんなこと言わないで」


それだけ言うと、菜々はうつむいてしまった。


「菜々、顔あげて」


手を伸ばして、菜々の顔を持ち上げた。


「ごめんな、変なこと言って」


「うんん」


「ちょっとだけ、思ったんだ。菜々は後悔してないかなって」


「してない」


「俺もしてない。菜々と結婚出来て、よかった」


「私も、同じ」


菜々の顔に、笑顔が広がった。


その笑顔を見ると、自然に俺も笑顔がこぼれた。


「食べよう」