「……」

 璃寛は何も言わない。代わりにカーキーは続ける。

「今アイツらが知ったところで何のメリットもねぇし、逆に混乱を招くだけかもしれねぇ」

「自分たちが知りもしないものに巻き込まれている、というのも随分悲惨なものだがな」

「何言ってんだ。どうせ俺らもよく知らねぇんだ。今さら悲惨も何もねぇよ」

 カーキーはそう答えて、カップを置いた。黒い液体が、渦を巻いていた。

「戦争が始まるな……。闇と、闇の戦争が……」

 敵の目的も何もわからないまま、戦いの火蓋が切って落とされた。
 それは実は、まったく無意味な戦いかもしれなかった。


 終わり