「一つ、大切なことを教えといてやるよ」

 地に伏せるネロへ向かって、麟紅は告げる。

「俺は確かに悪かもしれねぇ。だがな」

 スッ、とネロを見据え、今は汚れた白いスーツの後ろ襟を掴んだ。

「悪の反対は正義じゃねぇ。悪を倒すのはさらに強い悪だ。俺を殺そうと考えた時点で、テメェは悪なんだよ」

 そしてゆっくりとネロの体を持ち上げる。
 ふるふるとネロの顔が震えているのがわかった。

「ふ……ざけるな……ふざけるな……、僕が正義だ……僕が、僕が、僕の信条を馬鹿にするなァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」

 叫ぶネロの鼻っ柱を真っ直ぐに拳をぶち込んだ。
 ネロはそのまま気を失った。
 直後に麟紅も同じようにその場に倒れ、そこで意識は途切れた。