ズザザッ、ズザザッ
ズザザッ…

草を踏み鳴らしながら、ルシヴァナは夜の森の中を疾走する。


「…鬼…神……」

ルシヴァナの背に乗せられた透徹が目を覚ました。

「気付いたか、透徹」

「私を降ろして、行け…」

「殴るぞ、テメェ!
俺がそんな薄情なコトをすると思うか?」

「もう…奴が来る…」

ルシヴァナは上をチラっと見た。

月明かりの木漏れ日の中に、時折紫色の輝きが紛れるのを見つけた。

「ああ、そうだな。
仕方が無ぇ…
ここで迎え撃つ!」


スザザザザ!

馬の半身を車のドリフトのように滑らせると、

「アガスト!」

鬼霊槍アガストを取り出して構えた。

(さあ、どう出る?
ガルウノサス!!)

数秒の静寂が、何十分にも感じられた…


ズビャゥン!

ズビャゥン!

ズビャゥン!


木の葉と枝を吹っ飛ばしながら、ガルウノサスの攻撃が上空から途切れなく雨のように降り注ぐ!

「アクセル・フィストか!?
こんな速度で連発してくるたぁ…
凶結界がガルウノサスに力を与えている!」


ルシヴァナは槍を風車のように回転させながら、防御に徹するのが精一杯だった。