………ここは霊峰・富士山。

裾野に広がる青木ヶ原樹海には富士山の溶岩や噴火の影響で、氷穴や風穴と呼ばれる洞窟が無数に点在している。

その氷穴の一つに、ルシヴァナと透徹は居た。


洞窟の奥深くで結界の軸となり、半結晶化しているルシヴァナ。
当然のことながら、この状態では身動きすることはできない。


そしてその前で静かに座するは透徹。
傍らに純幽晶を突き立て、いつでも戦闘に入れる状態を保っていた。


「…………む?」

永久に続きそうな静寂を破る何者かの気配を感じ、透徹が純幽晶の束に手をかけたその時……!

「な…!?」


純幽晶を抜くより速く、その者の手刀が透徹の喉元に突き付けられていた!

「…水晶の虎。
貴様と殺りあう気は無い。
それでも剣を抜く、というのであれば抜くがいい。
少しは退屈凌ぎになるだろう」

目前で起こった一瞬の戦いの気配と、聞き覚えのある憎まれ口調に、ルシヴァナは顔を上げた。

『…何の用だ、リ・シュウ?』


それを聞き、透徹は驚愕する。

「!?
この者が………
獄神リ・シュウ!?」