「行ってみよう」

もはや飛ぶ力すら残っていなかった俺は、ディノウンとラシスに肩を借りて、歩いて蜂姫の走って行った場所に向かった。


(…この香りは………?)


ふと鼻に感じた香り。

覚えがある気がするが、これは何の香りだったか…

意識が朦朧としているせいで、ハッキリとは思い出せない。


しかし目的の場所に近付くにつれて、その香りも強く感じるようになり…

俺は無意識にディノウンの肩から離れ、ラシスと一緒に小走りで蜂姫が見つけたモノに駆け寄って行っていた。


そこで見たのは…
光り輝く丸い珠(たま)。

「ウノサス、これって…」

「ああ、間違いない…」


ファビスの強大無比な力も、俺の渾身の攻撃も…

「…コイツだけは、消すことができなかったか」


「ねぇ、これは何?」

蜂姫の問いに、俺とラシスは同時に同じ答えを言った。

「これは『心』…」


「心?」

「そう…
『さゆりの心』、だ」


ファビスの心臓として覚醒後、自分の意思など存在しなかったハズなのに…

さゆりは最後まで取り込まれず、人間として、『白月さゆり』として運命に抗っていたのか…