こちらに背を向けているので顔を確認することができない。

俺は小走りで近付き、正面に回り込んだ。



「さゆっ……!?
り………」



それは、さゆりの形をした…

厳密に言えば、今までさゆりだったモノ…

さゆりの服を着て、さゆりの髪を生やした…
黒い人型の塊。

なぜ、こんな姿に…


こんな…
こんな……
こんなっ…………!!

「俺は…
いったい俺は、今まで何をして来たんだ?」


炭のような身体になってしまったのは、既にファビスの心臓としての役目を終えた…ということなのか?

俺が目の前の黒いさゆりの肩に手を乗せると、それはボロボロと崩れ去り…

さゆりが身につけていた物と髪の毛が、バサッと崩れた塊に覆いかぶさるように落ちた。


「ウノサ…!!
間に合いませんでしたか…」

ディノウン達が来た。

しかし茫然自失の俺に掛ける言葉を見付けられず、ただ…

ただ、そこには沈黙の風が吹き続けていた。



「…行きましょう」

「…行こうぜ」

「参る、か…」

「…行くぞ」

「…行きましょ」


「………あぁ。
行く、か…」

「えぇ…
行きましょう、ウノサス」


そうだ。

ここに居ても何も進まない。

今、すべきコト…


「行くぞ!
凶王ファビスを倒しに!!」