その時…

俺の翼が、淡い光を放ちながらラシスを包み込んだ。

「これは…?」

もはや俺の腕の中でぐったりとしているラシスの土色の頬に、赤みが増してきた。

冷たくなっていた白い肌に、ゆっくりと温かみが戻る。

薄目に開いた乾いた瞳が潤いはじめ、まぶたが痙攣するように瞬きする。



俺の力は破壊のためだけのモノでは無かった…

大事な人を温め、潤し、もう一度その笑顔を取り戻すことができた!


「ラシス…」

俺が再びラシスを強く抱きしめると、俺の冷たい鎧のような皮膚の上からでも、柔らかく優しいラシスの温もりを感じることができた気がした。


「ウノサス、さゆりさんを追わないと…」

「ああ。
立てるか?」

まだしっかりとは立てないが、俺の肩にしがみつきながら立ち上がったラシスは、

「ウノサス!!
さゆりさんが…!」

俺の背後を見つめて叫んだ。


ゆっくりと俺が振り返ると、そこには…

「…さゆり?」

明らかにそれは見慣れたシルエットだった。