「……あいつのことは、気にすんな」
「………で、も…ハエバル…」
少し冷たい指先が頬を撫でる。
顔をあげて、爽と目を合わせた。
だけどすぐにそらされて。
「………だから、さ。俺のことだけ考えてろよ…」
ぽつりと爽がつぶやく。
赤い顔を隠すように、手を口元へもっていった。
……………いま、なんて?
「こんなときに言うのもアレだけど。愛が他の男のこと考えてんの……嫌だし」
照れてるからか、私と目を合わせようとしない。
「それに愛にさわんのは、俺だけじゃないと嫌だ、とか」
だけど頬をすべる長い指は、確かに私に触れていて。
「………愛の声聞けんのも、俺だけだったらいいのに、とか……」
そしてその指先がふいに耳に触れて「んっ」と声をあげてしまった。
それを見て、爽は笑う。
目が、合った。
「………独り占め、したいとか……そう思われんの、嫌?」


