そう言われても、動かない。
ゆっくり一歩踏み出すと、力がはいらなくて体がふらついた。
「わ、大丈夫ですか?」
ハエバルが私の腕を掴んで支えてくれた。
「あ、ありがと……」
「……俺のせいですよね、すいません。歩けます?」
「だ…だいじょ…っわッ!?」
突然、空いたほうの腕を引っ張られる。
体があたたかいものに包まれた。
「―――触んじゃねーよ」
それは、爽の腕のなかで。
「今日、帰ってくんな。他行け」
「………はい、わかりました」
「あと、指輪返せ。持ってんだろ?」
「そんな怖い声出さなくても返しますよ……はい、どうぞ」
あ……指輪…。
戻って、くる……?
「………帰んぞ」
ぽん、と頭に手をおかれて。
その手があったかくて、泣きそうになる。
だけどガマンして
爽に引っ張られながら、歩きだした。


