「……櫂となに話してた?」

「え?」



背中にまわされた腕が緩められて、少し離れて見上げれば、ムスッと不機嫌顔。

……あ、さっきの話か。



「いや、だからそんなにたいしたことじゃ」

「いいから言え」



右の頬をつねられた。

さっきまでのムードは完全に崩壊。



(なにをそんなに気にしてんの……)



「……あ」



理由を考えてみれば、ひとつしかない。

そっか、いつものアレ。

私が爽に愛されてるって感じさせてくれるもの。



『やきもち』。



理解すれば目の前の不機嫌顔もかわいく思えて、私は笑いながら答えた。