そして、私は足元でうずくまる櫂を見る。
……なんかこんなんばっかだよね、櫂。
少し同情しながら私もしゃがんで、同じ目線になってみた。
「櫂さ、雑誌のコンテストで賞とったんだったっけ?」
たしか、うん。皐月がそう言ってたはず。
櫂が顔をあげた。
「そや。いちばん上の賞な」
「あ、そうなの?すごいね!!」
私は手をたたくけど、櫂は眉をさげてため息をついた。
「でもなぁ……蔦さんまだ認めてくれへんし」
その言葉に、私は少し首をかしげる。
……なんで櫂は『お母さん』って言わないんだろう。
なにか事情があるのかな。
私が困った顔をすると、櫂はわかっているかのようにニカッと笑う。
「蔦さんがお母さんって呼ぶなっていうねん。年感じるから嫌やて、ほんまはどうだかわからんけどな」
……『ほんまは』?
本当は、なに?


