パタン。
個室に入り、鍵をかけるとすぐに携帯から先生の電話番号を探し出す。
最後。
これが、最後の電話。
ぐっと涙を堪え、
携帯電話を耳に当てた。
プルルルルル…。
規則正しい呼び出し音。
これが切れたら、さよならだ。
プツ。
『…はい?』
「先生?…沙紀だけど」
『何、名乗ってんだよ。画面見りゃ分かるっつの』
いつもと同じ明るい声。
微かに笑う声も、聞こえた。
「…」
『沙紀?』
「先生、ゲームオーバーだよ」
泣くもんか。
そう思っていたのに。
ポチリ。
目元から涙がこぼれた。
「バイバイ。」
『ちょ、待て、沙紀!』
プツリ。
先生の叫ぶ声が聞こえたが
私はかまわず受話器を置いた。
そして、気が変わらぬうちに
その電話番号を…削除した。
好きだった。
誰よりも大好きだった。
「くっ…」
声を堪えて、私は最後の涙を流した。
「沙紀、また保健室ー?」
「そ♪」
「最近サボりすぎー」
机に綺麗に教科書をしまうと
私は椅子から立ち上がる。
「だって眠いんだもん」
「せっかく結城の授業なのにさー」
…だからだよ
「私の変わりにたっぷり授業受けてね」
「…まったく」
私は由愛に手を振ると
急いで保健室へと向った。
結城の顔を見る前に。

