笑えるわけ無いじゃない。
こっちはこっちでいっぱいいっぱい。
緊張してるんだから。
「…それは無理。」
「可愛くねぇな。」
私の一言に、クスリと笑う先生。
分かっちゃいない。
先生の一言に私がどれだけ傷ついているか。
可愛くない、そんなこと分かってる。
「…なんだよ、つまんねぇ?」
「そんなこと、ありません。」
不機嫌になった私をミラー越しに見つめる先生。
どこか、妖しげな、
それでもって意味ありげな
そんな瞳で。
結局その日は、車で1時間程度走っただけだった。家の近くまで送ってもらい、私は先生の車から降りた。
「…大丈夫かよ」
「平気だって。家、もう見えるし。」
私が指差す先には
明かりが付いている我が家。
心配なんて…してないくせに。
「じゃあね、先生。」
「沙紀…」
「え?」
背を向けた瞬間、呼ばれた名前。
「…や、なんでもね。気をつけろよ」
「うん」
じゃあな、と軽く手を挙げると
先生は車を走らせて行ってしまった。
…なんだったんだろう。
ドライブは楽しかった。
先生と2人きりでドキドキだったし、
いつもよりたくさん
おしゃべりすることが出来た。
でも、心に引っかかるアレ。
私の隣に座っていたぬいぐるみ。
「…彼女の、かな」
私は考えたくなくて、
ぎゅっと目を瞑った。

