教室に戻ったと同時に
私の携帯が小さく振動する。



「沙紀、おかえりー」

「た、ただいま」



由愛の隣に腰を下ろし、
震える携帯をポケットから取り出す。



「どうしたー?顔赤いけど。」

「は、走ってきたからさ。」

「へぇ、まあ時間ギリギリだったからね。」






カチカチ、と受信ボックスを開く。




【放課後、玄関。】


それは先生からモノで。
絵文字無しのメールが私の携帯に届いた。



たったそれだけなのに
私は嬉しくてたまらない。



…馬鹿みたい。






「沙紀ー?」

「あっ、ごめんごめん。」

「まったく。」






午後からの授業なんて全然身が入らなかった。休み時間になるたびに、先生からのメールを何度も見直した。



放課後に呼び出されるなんて初めて。















「じゃ、先に帰るね」

「うん、また明日ねっ」




どんどんと席を立つクラスメイト。
教室に残ったのは私だけ。


時計をじっと見つめ、先生の業務が終わる時間を待つ。




そしてやっと時間。
私は教室を出て待ち合わせ場所へ急ぐ。







「よ。」

「…先生」