改札口の彼に。

帰り道、


「駅で境木先輩を確認しよう!」


そう歩に提案されて、二人で駅へ向かう。


(境木さんかぁ。。しらない。)

何度考えても、同じ駅を使う同じ高校の人に、長身の王子様はいない。

少し興味が湧く。

王子様タイプは好きじゃない。

だけど長身というところに、、、少しだけ興味が。。。


私の父は背が低くい。
母よりも。

小さい頃、父に肩車が大好きでよく肩車をせがんだ。

父が立ち上がると目の前にいきなり開ける景色。


広い世界を知った気になった。


でもある時、友達のお父さんの肩車の方が断然高いことに気がつく。

友達がうらやましかった。

背の高い男の人に憧れた。

背が高いと世界が違って見える。


そう信じていた。




長身のまだ見ぬ王子様。

歩と一緒に、駅で肉まんを食べながら彼を待つ。

「歩〜いつくるかわかんないよねー
境木さん?
部活なんじゃないの?」


「ヘーキ!
今日は来年ウチを受験する人達向けの学校説明会で、体育館は使用禁止!
しかも外はこの通り、雨。部活ないから!」



さすがよくご存知。



2月の雨は極寒の空気に、少し湿り気をもたらしている。


肉まんの湯気とあいまって生温かい温度を感じる。



“冷たいのに、温かい。”


彼が連れて来た空気だったのかもしれない。