マジックストーン


 でも、俺が言うことに梨海ちゃんは驚くんだろうなあ。だって。

「残念だけど、その気はさらさらないかな」

 優しく優衣ちゃんの腕を取り引っ張ったおかげで、俺の胸に優衣ちゃんが飛び込んだんだから。

「きゃっ……」

「どういうつもりですか」

 全身全霊で怒っている梨海ちゃんは、ぎゅっと握りこぶしを両脇で震えさせている。

「俺、優衣ちゃん一筋だから」

 ぴきっと梨海ちゃんの顔が強ばったのが分かった。差し詰め、『ウソつけ、この色男』とでも思ってるんだろうなあ。

「千紗にでも聞けばいいんじゃない?それぐらい自信はあるよ」

 一度、唇を噛みしめた梨海ちゃんは、視線を落として前髪にそっと触れた。

 深く長いため息をついた梨海ちゃんは、張り付けたような、それでも周りをぐんと華やかにするような笑顔を浮かべ、「……そうね」と。

「別に、あたしが口出しすることでもないですね」

 ふっと鼻に抜けるような笑いを零してから「それに」と言葉を続ける。

「優衣に手を出さなければ、何したって良いんじゃないんですか?他のケバい女と寝るなら寝るで、あたしはそのことを優衣に伝えるわ。 嫌われるだけ嫌われれば良い。
その時はお腹を抱えて笑ってあげますよ」