軽く体を弾ませながら玄関から正門へ、そしてそこから歩いて約10分のバス停へ。
おー、いるいる。
明るめの茶髪を綺麗なお団子にしてる梨海ちゃんと、緩やかなウェーブがかかった黒髪の優衣ちゃんを見つけるなんて容易いこと。
まず始めにわりかし背の高く目立つ梨海ちゃんを見つければ、そのすぐ右斜め下に優衣ちゃんはいるんだから。
すっと足音を消して、背後から優衣ちゃんに抱きついた。
「そうなの。だから――きゃあっ?!」
ぴくんと上下に動く優衣ちゃんは、そのまま体を強ばらせる。
「―――何してるんですか」
抑揚のない言葉が、左からちゅどーん。
「梨海ちゃん、こあーいっ」
ギッと睨む梨海ちゃんは、手早く優衣ちゃんを自分の背に隠した。
あーら、敵意剥き出し。
「もう優衣に近寄らないで。そして触れないで」
他にもバスを待っている生徒はいる。ただ、梨海ちゃんの声がいつもより低く、ちょうど二人の周りには人がいなかったから、バスを待っている生徒は何が起きたのか分かってはいないはず。
そう言われることは想定済。

