マジックストーン


「どうして? ってぇ? そんなの決まってんじゃあん。椎葉優衣とか、神崎先輩が誘ってるのに興味なしみたいな。ムカつくんだよね」

 ぎりっと奥歯が擦れる音が響く。

 ほら、さすがの俺でも限界っちゅうもんはあるわけで。それを、平気な顔して体当たりしてきた彼女には、少し黙ってもらおうかな。

「はあー。随分と口が過ぎるんじゃない?さすがの俺でも怒るよ」

「でも少しは痛い目に合わせた方が――」

「へえ。そういう思考回路なの?君は。 女の子にこんなこと言いたくないけど、優衣ちゃんと梨海ちゃんに何かしてごらん。何十倍にもなって自分に返ってくるから。 それに」

 彼女の言葉を遮って、笑みを浮かべたまま言葉を重ね、区切る。

「君じゃあ優衣ちゃんと梨海ちゃんには適わないよ。自分でも気付いてるんじゃない?二人の可愛さと美しさに嫉妬してることくらい。
あとさ。俺の一方的な優衣ちゃんへの片思いなんだから、邪魔しないでよね」

 うっと息を呑んだ彼女に「覚えといてね〜」と、右手をひらひらとさせる。

 素早く先ほどかかってきた番号を着信拒否にし、玄関を目指す。

 きっと、優衣ちゃん達はバス停にいるはず。梨海ちゃん、バス通だもんね。

 まだバスが来る時間ではないはずだから、急げば間に合う。