マジックストーン


「……ねぇ。何で、俺のこと好きにならないの?」

「何でって言われても……」

「好きな人でもいるの?」

「………だとしたら、どうなんですか?神崎先輩は、私のこと、諦めて――」

「逆に燃えるね」

 耳元で囁かれた言葉に、体がぴくりと反応してしまった。

 神崎先輩の息が耳にかかる所為で、ジンジンと耳に熱が集中する。

 わあぁぁぁあっ。
 耳が熱いっ。っていうか、苦しいんですけどーっ。

「優衣ちゃん、耳、あかーい」

「だっだっだっ!!」

「あはは。ホントに可愛いなぁ。
……ねぇ、優衣ちゃん。さらに好きになっちゃったんだけど」

 ことさら甘い声で囁く神崎先輩は、優しく包むように私を抱きしめる。

 ……もうっ。
 なんで、こう、神崎先輩のペースに巻き込まれちゃうんだろぉ。

 神崎先輩はしばらく私を抱きしめた後、満足したのかゆっくりと腕を緩め、離れた。

「……じゃあ、俺……」

「あ、はい。 さようなら。 気を付けて帰ってくださいね」

 唖然とする神崎先輩はあからさまにため息をつき、口を尖らせる。

 その様子はまるで拗ねる小さな子、あるいは某アニメ暴君の下僕。