「優衣ちゃん?」
「……神崎先輩って……彼女いるんじゃないんです、か?」
私の中で増殖する疑問の突破口として、多分当たり障りのない質問を絞りだした。
その返事をどんな顔で聞けばいいのか分からなくて、神崎先輩のスリッパをジッと見つめる。
「いないよ。でも、今。俺の中での彼女候補は優衣ちゃんだけど、なかなか手強いんだよねぇ」
今度はからかいを含んだ声音で。
またあの真剣な声で言われたらどうしよう、と内心ハラハラだった私は、胸を撫で下ろした。
「私、神崎先輩のこと好きになんてなりませんよ?」
だから、私も笑いながら少しからかいを含んだ声で神崎先輩を見上げたんだ。
神崎先輩は一瞬、その瞳をおおきくしたけれど、すぐにいつもの微笑みに戻った。

