「残念ね、優衣ちゃん。まぁまぁ、上がって上がって?」
「じゃあ、お言葉に甘えて」
甘い笑みを乗せたその顔は、彩織ちゃんをうっとりさせるのに十分すぎるくらい。
そんな彩織ちゃんに連れられて家に入っていく神崎先輩の背中を見つめた。
ホント、この人はどこまで自由な人なんだろ。
ドアが閉まる前に玄関に滑り込んだ私は、さらに神崎先輩のことが分からなくなった。
「優衣ちゃん、ケーキ。彩織さんと食べて?」
「………はい」
「あれ?もしかして、優衣ちゃんヤキモチ?
大丈夫。俺、優衣ちゃん一筋だからっ」
「そうじゃなくてっ。……神崎先輩は、何がしたいんですか?何が目的なんですか?」
「優衣ちゃんの彼氏になりたい」
途端。
からかうわけでもなく、あの甘い笑顔もない、いたって真剣な表情(かお)で。
そんな見たことない表情するから、私は目を泳がせるしかなかった。

