マジックストーン



 何度か道を間違えたけど、他愛のない会話をしているうちに、無事家の前までたどり着いた。

 うん、たどり着いたのはいいんだけど。

「な、何でですか?」

「んー?何が?」

「家の前で止めてくださいっ」

「だって、優衣ちゃんがいけないんだよ。ケーキはもらってくれないし、期待させるように可愛く笑うから」

「だからって抱きつかないでくださいっ」

「じゃあ、ケーキもらって?」

 どうしてもらってくれないの、とでも言うようなその瞳は、演技なのか若干ゆらゆら揺れている。

 そそ、そんな顔されたら私、困るんですけどっ。

「けっケーキもらったら、離してもらえますか?」

「しょうがないなぁ。離してあげるよ」

「じゃあ!頂きます……。ホントすみません、こんな高いもの……」

「嬉しくないの?」

「そんなことないですっ。ケーキ大好きで、嬉しいんですけど。そ、の……」

 ゆっくりと私を解放する神崎先輩の手から紙袋を受け取り、中の白い箱に視線を落とした。