オドオドする私に神崎先輩は、瞳に輝きを乗せ私を見つめた。
「とりあえず、お家に帰ろうか。送るから案内して?」
せっかく買ってもらったケーキを受け取らなかったのに、神崎先輩は怒りもせずに、むしろ、とびきりの笑顔を向けてくれる。
神崎先輩は、一体何がしたいんだろ。
特技がピアノしかなくて、頭だってそんなによくない。
そんな取り柄のない私に、どうして優しくしてくれるの?
生まれ持った性格からなのか、それとも装ってるだけなのかなんて、私には到底分からない。
「ここどっちに曲がるの?」
「右……だと思います」
「優衣ちゃんって、ホントに方向音痴だったりする?」
「違いますっ。こっちから家に帰ることってあまりないだけなんです!」
「ははっ。必死になんなくてもっ」
爽やかに笑う神崎先輩は、春の日射しに負けないくらい柔らかく温かい。
だから、生まれ持った性格であってほしい、と私は気付かないうちに祈っていたの。

