マジックストーン



 並んでいる人になんて目もくれず、私を外に放置したままお店の中に入っていく神崎先輩。

 当然並ばずに入ったため、女性定員さんが焦っているのが外から見ても分かるのに、笑顔と一言二言で驚いた表情に変えてしまった。

 あの方、何を言ったんでしょうか?

 安易に予想出来てしまう私って一体なんなんだろ……。

 一度綺麗なお辞儀をした後、お店の奥に入っていき、30歳半ばの男性と一緒に紙袋を持って現れた。

 神崎先輩は紙袋と交換に、カードを――えっ、カードでお支払いですか?!

 にこやかに男性と握手を交わした後、お店から出てきた。

「ごめん、優衣ちゃん。待たせちゃった。あ、ほら。はい、どうぞ」

「あ、いや……その」

「もしかして、ケーキとかダメ?『生クリーム食ったら気持ち悪くなるんだよっ』みたいな感じ?」

「そんなことはないんですけど……。それは、貰えません」

「何で?」

 何でって……。

 私にお金を使ってもらう理由なんて見当たらないし、ましてや最近知り合った人にこんな高いものを買ってもらえない、よね?