マジックストーン



「……熱、上がっちゃったかも。二階に行くね?」

「大丈夫?お昼、まだだったね。お粥食べて薬飲まなくちゃ」

「彩織ちゃん、ありがとう」

 ひとりで階段上れるから、と彩織ちゃんに断りを入れて、重たい体を引きずる。

 ベッドに倒れこむように体を投げた。

 少ししてから彩織ちゃんが、お粥と薬を持ってやってきた。

 全部は無理だったけど、食べれるだけ食べて、薬を飲んで再び夢の中。

 ……見慣れた学校の廊下。

 ゆっくりと歩いていれば、不意に名前が呼ばれた。

 それは、甘く、優しく、とろけちゃうような声。

 振り返れば声と似た笑顔。

 私はその人に吸い込まれるように近づき、背中に手を回す。

 妙に落ち着く腕のなかにしばらく埋まっていると、大きな手が私の頭を撫でた。

 頭から髪の流れにそって頬に触れ、顎を持ち上げた。

『……優衣ちゃん』

『……神崎せんぱっ』

 私の顎を持ち上げ、顔を近付けてくるのは。

 ………………は?