すっと一歩下がった滝本集士は屋上の扉に背中を向け、ポケットから白い封筒を取り出した。

「望遠鏡で見られてる可能性があるからあんたはしゃべんなくていい」

 こくりと頷いた俺を見た滝本集士は、ふっと軽く息を吐いてから視線を上げた。

「俺は文化祭の時、こいつを見かけた」

 白い封筒から一枚の写真を取り出した滝本集士は自分の口元まで写真を上げる。

 ……加賀美敦司。

「あの日、あんたに連絡する少し前にこいつは俺たちの教室に来たんだ。その時はただの客だと思ってた……でも! 女装して優衣の身代わりになって走ってる時、すれ違ったんだ。そしたら、そいつ『ボクは祥也を許さない』って呟いた」

 写真に視線を落としていた滝本集士は「だから」と顔を上げた。

「調べたんだ。こいつのこととあんたのことを。 ……まあ、七瀬梨海からあんたのこと噂でもいいから調べてくれって頼まれてたんだけどね」

「それで?」

「……こいつとあんたの関係、どうして今の状態になったかまでは分かんなかったけど、昔の関係ならね」

「まだ、あるんだろ? お前がこんなことを俺に言うわけないよね?」

 すっと目を細めた滝本集士は、

「こっちが本題」

 と白い封筒からもう一枚の写真を取り出した。それは――

「もちろん、知ってますよね。このヒト」

 ――俺の大嫌いなあいつだった