時間というのはあっという間で、なんて前フリがめんどくさい……ってくらい放課後がやってくるのは早かった。

 放課後。手紙にあったように一人で屋上に繋がる階段を上る。

 昼休みに滝本集士の様子を見たけど、別に変わった様子もなくて普段どおりだった。だからこそ、嫌なんだけど。

 優衣とは一緒に帰れないし、滝本集士から呼び出しは食らうしで超不機嫌モードの俺は手荒く鉄の扉を開けた。

「早かったですね」

 振り返って白い歯を見せるのはラブレターの送り主滝本集士。

「ごめん。俺、男には興味ないから」

 ラブレターの返事をした俺は片手を上げて踵を返した。

「ちょっ! 俺だって男に興味なんてないからっ!!」

 駆け寄ってきた滝本集士は俺の手首を掴んで扉からどんどん離れていく。

 一番端の手すりまで来たところで、滝本集士はいきなり真剣な表情をして、

「扉の反対側に七瀬梨海がいる。もしかしたら優衣もいるかもしれない。……あいつに聞かれたくない話、あんたは溢れるくらいあるんだろ」

 と俺の耳元で囁く滝本集士は続ける。

「……俺はあんたの味方じゃない。優衣の味方だ」