「優衣ちゃん? どうかした? ……あ、もしかして具合でも悪いの?!」
何を勘違いしたのか、神崎先輩は私の前に回り込んで肩を優しく掴み顔を覗き込んだ。
「……っ。 ち、かい……っ」
ん?って覗き込まないでくださいっ!! し、心臓が足らないんですっ。予備に付け足さなきゃいけないんですぅっ!!
わーっ! そうやって、優しくなんだけどちょっと強引に顔から手を引き離そうとするのも止めて下さいぃぃいっ!
「今日、一緒に帰ろうと思ったんだけど……顔、赤いよ?熱あるなら彩織さんに電話しないと……」
「だっ!いじょうぶですから……。 しっ、失礼しますっ!」
自分の鞄を引ったくって教室を飛び出した。
傍にいるだけで、声を聞くだけで、目が合うだけで、ドキドキしちゃうのに。一緒になんて帰ったら、私、どうなっちゃうんだろう。
もしかしたら、溶けちゃったりするのかなあ。で、でもでも!溶けたら迷惑……っていうか、完全に病院送り、だよね……。
下駄箱からローファーを取り出して足を突っ込んで、一歩、踏み出してから気付いてしまった。
溶けちゃったりするかもだけど、神崎先輩と一緒に帰りたい。隣を歩きたい――

