それがダメだったんだと思うの。気付いたときには、悲しそうな笑みを一瞬浮かべた神崎先輩が、一言「ごめんね」と言って私の頭を撫でた。
「――あ。舞希ちゃん時間。お兄さん待ってるんじゃないの?」
「え? あっ! 神崎先輩優衣のことお願いしますっ」
それじゃあ!と急いで玄関を飛び出していった舞希ちゃんの背中を見送ってから、
「そろそろ帰らないとね」
と優しく微笑んだ神崎先輩に胸がきしきしと傷んだ。
私、どうすればいいのかな。どうすれば、神崎先輩はちゃんと笑ってくれるのかな。
隣を歩く神崎先輩の横顔を見ては、アスファルトを見つめての繰り返し。
でも、なかなかいい案が見つからない。
「……ん。 優衣ちゃん?」
「っはい?」
「お家、着いたよ」
「あ、ありがとうございました」
あ。神崎先輩……帰っちゃう。
まだ、あともうちょっとだけ一緒にいたいって思ったら迷惑かな? あっ……どうしよう。
「……え? 優衣ちゃん?」
「あっ……えっと。これは、その……」
思わず掴んでしまった神崎先輩のワイシャツの裾。それを離そうか離さないかで迷ってしまった。

