マジックストーン


「優衣ちゃんが眠そうに俺に抱きつくからいけないんだよ」

 え?私、抱きついたの……?

「ほら、そろそろ帰るよ。送ってくからカバン取りに行こう」

 そう言って、少し混乱する私を立ち上がらせる。屋上のドアを開けて、階段を降りた二回目の踊り場で、

「カバン持って玄関で待ち合わせね」

 そう笑って、教室に向かった。

 夕陽に染まる廊下を教室に向かって、そしてカバンを持って玄関に向かって歩く。

 なんだか神崎先輩はもう待ってるような気がして。少しでも待たせちゃ行けない、そう思ったの。

 だから、小走りで玄関に向かった。そしたら、見ちゃったんだもん。

 何を話してるかは分かんないけど、神崎先輩と女の子がすごく楽しそうにしゃべってるところ。

 なんだか入りにくくて二人が見えない位置まで下がり、壁に寄りかかった。

 女の子はこっちに背中向けてるから顔は分かんない。だけど、あの後ろ姿はきっと――

『あははっ』

 ――舞希ちゃん?

 楽しそうな二人分の笑い声が響いて聞こえる。そのたびに胸の奥がぎゅっとして、苦しい。

 もしかして私……わたし――

「それがヤキモチ。分かったか?」

 ――神崎先輩のことが好き……?