マジックストーン


 ふわりと爽やかな甘い香りがする。ふと、顔を上げると、さっきとは打って変わって、柔らかい優しい微笑みになっていた。

「神崎先輩……」

 さらに甘さを加えて微笑む神崎先輩は、私の頭を撫でる。

「どうして……抱きしめてるんですかっ」

「え? 抱きしめてほしかったから泣きそうだったんじゃないの?」

「ち、違っ――」

「分かってる。 分かってるから、あとちょっとこのままでいさせて……お願い」

 ぎゅっと抱きしめられて何も言えなくなってしまった。だって、私もこのままがいいって思ったから。

 神崎先輩の腕の中は温かくて、ものすごく安心出来る。私の心臓がドキドキする。それに合わせて神崎先輩の心臓もドキドキしてる。

 ときたま吹く秋風が気持ちいい。神崎先輩の匂いと温かさと秋風でなんだか……。

「……いちゃん。優衣ちゃん。こんなところで寝たら風邪引いちゃうし、俺、我慢出来なくて、襲っちゃうよ?」

「……ん」

「チューしてエッチするよって言ってるんだよ」

「………っ!?」

 なっ?! ちゅ……えっ……?!!!