マジックストーン


「優衣ちゃん? どうしたの?」

「えっ? いや……あの、べ、別に何でもないですっ」

 ふいっと赤くなってしまった顔を神崎先輩に見られないように、そっぽを向く。

 神崎先輩が後ろにいる。うん。すっごいドキドキする。心臓がばくばくいってる。あと、二つの条件、か。

「あ。そういえばさ、優衣ちゃん。今度、また、デートしない?」

「デート、ですか?」

「あれ? 珍しく即答で断らないんだね」

「えっ……それは……」

 あれ? どうしてだろう。

「とりあえず、デートの予約したから。優衣ちゃん覚えといてね」

 にこり、と笑う神崎先輩は、少し私に近づいて、大きな手のひらを私の頭に乗せた。

「優衣ちゃん。俺に用があったんじゃない? ほら、初めて優衣ちゃんから俺に会いに来てくれたでしょ?」

 確かに。用があったから神崎先輩のところに来たけど……。何の用か、なんて絶対言っちゃダメなんだから……どうしよう。

 ていうか、私、初めて自分から神崎先輩の所に来たんだ……。

「優衣ちゃん?」

「えっ? ……あっ。ただ、ちょっと、神崎先輩とお話したかっただけで、大した用はないんです……」

 しどろもどろに話せば「そうなんだっ!」と嬉しそうに顔を綻ばせる神崎先輩。

 ……なんだかさっきからドキドキしすぎなんですけど。