「優衣ーっ」と休憩室に入ってきたのはタカジくん。「廊下大変なことになってるけど」執事さながらの丁寧なお辞儀をした後そう言ったタカジくんは私の頭を優しく撫でた。
「……私、何も悪くないのに……」
「まあ、可愛いすぎるっていうのも罪、だよね。 優衣、神崎センパイ呼んだ?」
「……呼んでないけど」
だって神崎先輩が悪いんだもん。
「ちょっと待ってて」
にかっと白い歯を見せて笑ったタカジくんはもう一度丁寧にお辞儀をして休憩室を出ていった。
「あいつ、何する気かしら」
疑いを含んだ声音の梨海ちゃんは休憩室と教室を仕切るカーテンから顔を出す。
気になって私も顔だけ出して廊下の様子を伺った。
「おっほん。 えー。おれは今話題の“無我夢中で走るメイド”のお友達、滝本集士ですっ」
……きっとあそこでもさっきしたみたいな執事なお辞儀をしたに違いない。
徐々に騒めきがなくなりもう一度タカジくんの咳払いが廊下に響いた。
「メイドちゃんは、残念ながら神崎祥也センパイのお気に入りでゴザイマス」
わざと使う敬語がなんだかしっくりこない。でも、それがタカジくんらしい。

