再び強い風が私を押す。このコンクリートの壁の角を曲がったところに神崎先輩と岩佐先輩がいる。
くっと足に力を入れて踏み止まる私は風の抵抗を少なくするためにしゃがんだ。
「……優衣ちゃん、どこ行っちゃったんだろ……」
さっきとは打って変わって心配そうな声音に胸がドキリとした。
「大キライって言ってビンタしてったんだから、相当怒ってるんだろうな……」
「心配なら早く探しに行けよ」
「なんか最近探してばっかなんだよね。そろそろ優衣ちゃんが俺のこと探してくれたっていいのに」
「優衣ちゃん来たら電話して」の後、バタンと重たい扉が閉まる音。
風が頬を撫でた時、かすかにタバコのにおいが鼻を掠めた。
「あいつは本気だよ」
唐突に飛んできた言葉を、私は、受けとめなかった。ううん。受けとめられなかったのかな。
「……本気ってなんですか? 私にメイド服を着させるために、クラスメイトの女の子を抱きしめることを約束することですか?」
分からない。神崎先輩が分からないの。
「無理やり私を抱きしめて意地悪なことを言うことですか?」
神崎先輩の本気って、なに……?

