びゅうっと秋の風が私を包む。夏がすぎた10月半ばの風は肌寒い。
「お前がここに来るなんて、珍しいな」
聞き覚えのある声がして振り向けば、扉の横に座り込んでタバコをくわえる岩佐先輩がいた。
「あっ……」
紺色の浴衣。
「……寒くねーのか?そんな格好で」
「え?……わっ!!!!」
忘れてたっ。私、メイド姿だっ!
あたふたする私に飛んできたのは大きなブレザー。
「い、岩佐先輩は何着るんですか?」
大して話したことのない怖そうな岩佐先輩に質問するだけで精一杯の私はきつくブレザーを握っていた。
「はやく着ろ。 てめえに風邪引かれるとめんどくせえんだよ」
紫煙をくゆらす岩佐先輩はじろりと私を見る。眼で『着ろっつってんだろ』と言われてるみたい。
「……ありがとうございます」
袖に手を通した私はとりあえず空を見上げた。
青い青い空。わたがしみたいなふわふわとした雲はゆっくりと動いている。
……私、また、神崎先輩をビンタしちゃった……。神崎先輩怒ったかな……?で、でも、あれは神崎先輩が悪かったもん。教室であんなにくっつくし、それに……あんなこと言うから……。
「椎葉、お前、今、何考えてる」

