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「彩織さんにはちゃんと連絡したの?」
神崎先輩宅から梨海ちゃん宅に移動した私は和服姿に変身する梨海ちゃんを見つめながら頷いた。
梨海ちゃんのお家――七瀬家は華道家。大したことないわよ、って梨海ちゃんは言うけど、すごく立派なお家だと思うの。
一人で和服姿に変身した梨海ちゃんは髪の毛もものの数分で綺麗にまとめアップになっている。
「これから稽古だけど優衣もやる?」
「……む。出来ないって分かっててそういうこと言うんだから。梨海ちゃんのイジワル」
「そういう事よ、優衣」
どういう事? と首をかしげる私に梨海ちゃんは柔らかく微笑んだ。
「誰にだって得意不得意があるのよ。それがたまたまあたしは華道で、優衣がピアノだっただけ。 ――まあ、あのカッスカスのセンパイが言ってたこともあながち間違いじゃないってこと」
……カッスカスのセンパイって神崎先輩のことだよね。
「あたしは優衣がピアノをやってもやらなくても興味ないし」
「え? そうなの?」
「優衣が楽しそうなら嬉しいのよ。それが今までピアノを弾いてる姿だったってだけ」

