いつもの神崎先輩じゃないのが嫌で、戻るまでじっと黙りこくっていたのに。
「なっなっななな何してるんですかっ?!」
「え? 押し倒して……あ。 ごめんごめん」
ぎゅっとされたままの私はいつの間にか天井とこんにちはしていて。何故か神崎先輩は私の来ている薄ピンクで花柄のシフォンワンピースを掴んでるし。
それに! ごめん、って言ったくせにどうして上から退いてくれないんですかっ!?
「退いてくださ――」
「ねえ、優衣ちゃんさ。どうして聞かないの?」
「……え?」
「写真のことだよ」
「写真?……ああ、先輩が若いときの」
「まだ若いんですけどお」と笑う神崎先輩にはさっきの面影はなかった。
「興味がないとか言われたらショックだから、俺が勝手にしゃべるね? ――あの写真に写っていたのは俺と加賀美敦司と高村花音(たかむらかのん)。敦司と花音は俺の二個上」
「……高村花音……さん……」
高村花音さん――4歳からピアノを初め、5歳で初めてのコンクールで入賞した弱冠二十歳の天才ピアニスト。
そして、ピアノの技術に負けないくらいの美しさ。

