5限目終了のチャイムも6限目開始のチャイムも耳に入らなかった。
「りりり梨海ちゃっ!ホントに、言うの?」
「あったりまえよっ」
あっという間に放課後。
梨海ちゃんはグイグイと私の腕を引っ張り、廊下を闊歩し職員室を向かう。
あぁ、もう。
梨海ちゃんを制御できる人なんているのかなぁっ?!
ガックリとうなだれてる私になんかお構いなしの梨海ちゃんの背中を見つめ、反抗するのを諦めた。
「ねぇ、梨海ちゃん。先生に何て言うの?」
「ふふ。楽しみでしょっ?」
「……全然、楽しみじゃない」
梨海ちゃんが振り返って「何か言った?」と言ったのと同時くらいに、周りが黄色い声に包まれた。
……き、黄色い声?
「相変わらずうるさいわね、あの先輩は」
「あの先輩?」
「ほら、知らない?神崎――」
「嬉しいなっ。俺の噂だなんてっ」
不意に後ろから聞こえてきた声に、私は肩を上下させ梨海ちゃんにくっついた。

