不思議な感覚に捕われる私は見えなくなった後も、しばらくじっとしていた。
歩きだそうとした時、遠くからタンタンタンタンッという音が聞こえ、それが近づいてくる。
えっ……怖いんですけど! お願いだから、通りすぎのジョギング好きのおじさんがいいなあ、なんて無理ですかね?あっ、別におじいちゃんでも構わな――
――ガバッ
「見つけたっ!!」
苦しいくらいに後ろから締め付ける腕はほんのり赤くなっている。
悲しいかな、振り返らずに後ろにいる人の顔が浮かぶ。
「どうかしたんですか?神崎先輩?」
鎖骨辺りに巻き付く腕をさりげなく解いた私は、その場で半周した。
「どうかした?だって?! それはこっちのセリフだよっ。……ったく、早朝家出なんて初めて聞いたんだけど。とりあえず、彩織さんと梨海ちゃんに連絡しなきゃ。優衣ちゃんは梨海ちゃんに電話して。……ほら、もたもたしないで早く!」
早口に言った神崎先輩はすでに携帯を耳にあて、たぶん彩織ちゃんに電話中。
私はというと、
『こおんの、バカ優衣ぃぃいいいっ!!』
「ごめんなさいぃぃいいっ」
電話口で梨海ちゃんに怒鳴られ、ひたすら謝っていた。

