「……違いますけど?」
「じゃあ、キミの片思い」
「そんなことないですっ」
眉にシワを寄せる私を見てから、加賀美さんはふわっと笑う。
あれ……? なんだろう、この笑顔。胸の奥がくぅんってする。
「なら、ボクが入る隙はあるね」
「……へ?」
まるでスローモーションのように、加賀美さんの片手が私に向かってやってくる。
そしてそれが私の頭を固定し、私の唇が熱い。
なっ……えっ、どうしてーっ?!
ぐっと加賀美さんの胸を押して離れた私は服の裾で唇をごしごし拭う。
「かっ加賀美さんっ……!!」
「あはは。カワイイね。――そういえば、名前、優衣ちゃんだっけ?合ってるかな?」
おそるおそる「そ、そうですけど」と答えると「カワイイ名前だよね」と私の頬を優しく撫でる。
「ひっ……や、止めてくださいっ」
眉間にシワを寄せながら身を退くと、柔らかく笑んで「じゃあボクは帰るかな」優しく一度だけ私の頭を撫でた。
小さくなる加賀美さんの背中を見つめていた私は、加賀美さんに会ったのが二度目だと思えなかった。
けれど、記憶の中で今日会ったのが二度目。

