マジックストーン


 黒髪ですっきりとした顔立ちの不信者は、両手を顔の高さに上げてにっこりと笑う。

「そんなに驚かないでよ。悪いヒトじゃないんだかさ」

「どっからどうみても悪い人にしか見えませんっ」

 この間の夏祭りで一方的に話し掛けてきた不信者は、じゃあ、と。両手を上げ、ふっと頬を緩ませた。

「ボクはキミに信じてもらいたいから、キミが知りたいこと何でも答えてあげる」

 じっと不信者を観察した後、一定の距離をとってから「お名前は?」と恐る恐る口を開く。

「加賀美敦司(かがみあつし)」

「年齢は?」

「二十歳」

「どうして今ここにいるんですか?」

「ボクの家の前をキミが通ったからついてきただけだよ」

 さらっと言っちゃってますけど、それって若干ストーカーチックですよねえ? ていうか、私全然気づかなったんですけど……。

「もういい?」

「あと一つ。 どうしてあの日私に話し掛け――」

「可愛かったから。 ――それより。ボクもキミに聞きたいことがあるんだけど」

 形勢逆転、なの?

 不信者改め加賀美さんは口角を上げてほほえ――

「この前一緒にいた男は彼氏?」

 ――え? め、目が笑ってない……。