だって俺……優衣ちゃん自身を知ろうとしなかった。 ただ怖かったんだ……あいつと優衣ちゃんが重なりそうで。
「……そんなわけないのに」
優衣ちゃんの好きな曲がノクターンってだけで、全然違うのに……。
再び走りだした俺はとりあえず学校方面に向かっていた。 学校の校庭では、活発な外部が汗を流している。
……優衣ちゃんが行きそうな所、行きそうな――あ。
踵を返した俺は最後の望みをかけてアスファルトを蹴った。
◇◇◇
毎日同じことの繰り返し。好きだったはずのモノが、また、私の手のひらから消えてなくなってしまう。
それがひどく悲しくて、辛くて。
どうしてもっと上手に弾けないんだろう、とか、どうして自分に才能がなかったんだろう、なんて考えだしたらキリがない。
最終的に私はまた弾けなくなった。
弾こうと思って鍵盤に指を乗せても、白と黒は沈まない。
私のピアノなんて誰かの胸を打つようなものでもなければ、もう一度聞きたいと思うものでもないの……。
それに神崎先輩だって帰っちゃったし。

