「……優しい人、だとは思います」

 思ったことを口にすれば、「ふーん。で?」と返ってきた。

「最初は本当にキライでした。……でも、今は……キライじゃない、と思います」

「じゃあ好きなのか?」

「…………」

 すき?

 私が神崎先輩を………?

「神崎先輩は面倒見の良いお兄ちゃん、って感じなんです」

 別に好きっていうわけでもないと思うの。

 梨海ちゃんが前言ってたことを借りれば、ドキドキしない、のかな?

 あっ、でも。抱きしめられたり、キスされたりするんじゃないかっていう警戒心のドキドキならある。

「だったら、そう言ってやれよ。神崎だって椎葉のことも諦めがつく」

「………も? “も”ってどういう……」

「どっちみち結婚するんだ。早めに納得したほうが良いに決まってる」

「神崎先輩結婚するんですか?」

 じゃあ、どうして私なんかに本気とか言ったりするんだろう。

 神崎先輩、ますます謎だらけになっちゃう。

「お前、知らないのかよ……」

 何をですか? と口を開きかけた時、ガラガラっと保健室のドアが開いた。