マジックストーン


「あれぇ?もしかして、おやすみのチュウとかしなきゃ眠れない?」

 甘い声で私をからかう神崎先輩は、どこまでも優しい笑顔していて。

 私が神崎先輩をじっと見ると目を細めて「たべちゃうぞ」と楽しそうな声色で言った。

 今までこんな風に思ったことなんてないのに……どうして。

「もーシカトしないでよ」

 “隣にいてほしい”って思うのかな?

「………せんぱっ……」

 また熱が上がりそうだから? こんな風に思うの……?

「なあに?」

 心配になったのか私の額に手のひらを当てる神崎先輩は、それを頬に持ってきた。

「ちょっと熱上がっちゃったね」

 いつの間にか神崎先輩が勝手に手を繋いでいて。私は思わずそれを強く握った。

 温かい。

 私のか、神崎先輩のかなんて分からないけど、心地よい温かさで、なつかしい。

 小さい頃に泣いていた私の手のひらを握った手も、このくらい温かかった。

「……………せんか?」

「ごめ。もっかい」

 なつかしい温かさを私に下さい。

「……せめて、私が寝付くまで、隣にいてくれませんか………?」