他校での友達って、歩夢しか知らないし。
「会いましたよ」
そーっだったっけ?
記憶をたどって、誰だったか思い出そうとする。
「俺のこと、助けてくれた」
え?助けた?
あたしが助けた男の子?
やっぱ、
「あたしキミのこと知らな───」
「歩夢と言い合って、やられてた時、助けてくれたじゃん!」
言葉を遮られ、続けられた声に身体がビクッとした。
さっきまでの笑顔は消えて、泣き出しそうな顔をしてる。
このコに、
「あっ…すいません」
困ったように手で口を抑えるこのコに、あたし、会ったことあるんだ。
歩夢に傘を返しに行った日、昇降口で歩夢と揉めてた。
あの時の男の子。
正式には、あたしは助けたんじゃなくて、ケンカを止めただけ。
でも、だとしたら、どうしてここにいるの?
「あの、俺、ちゃんと礼言いたくて」
また笑顔に戻って、あたしを真っ直ぐ見つめてくる。
「ありがとう、木崎さん」


