目の前の相手が近づいてくる中。


嘘でしょ……逃げ場が、ない。




不意に背後から近づく人の気配。


後退りもできなくなったあたしは、立ち止まって怯えることしかできない。




ヤバい。

ヤバすぎる。


このままじゃ、あたしやられちゃう。




「みくるちゃん、そのままうしろ下がって!」

「え?」


希望を見失った直後、叫び声が耳に飛び込む。



「早く!」

敵の相手をしながら必死に叫ぶ太陽に、あたしはすぐさま決心した。



この状況で迷ってる暇はない。


後方の敵なんて、前方の敵から逃げた後に考えればいい。

だから、足をうしろ向きに踏み出した───





「きゃっ」


途端に、そのまま背後から引き寄せられて。


あたしのすぐ真横。

勢いよく突き出た長い棒が、目の前の人を押し退ける。