ケンカ上等☆不良校上々↑↑




「急げよ。
少し時間稼いどいてあげるからさ」



まったく聞き覚えがなかったわけじゃない。

でも記憶は虚ろで、声の主が誰だかわからないまま。

走れ、という合図と同時に無我夢中で駆け抜けた。



「あ、てめぇ待て!」

「なに逃がしてんだよバカ。
どっちに逃げた?」

「左だぁぁあ!」




叫び声を背中に、突き進むのは薄暗い森の中。


この先が海?

いまいち信用性薄いなぁ。

本当にたどり着けるの?



不安は募るけど、残念なことに今ある情報はこれしかない。

誰なのか思い出せないけど、助けてくれたんだからきっと知り合いで………




「あ、」


木の枝の隙間を抜けると、本当にあった。

いつの間にか天に浮かんだ月の光を映し出す、大きな鏡。



「……海だ」



引き寄せられるように、あたしは浜辺へと足を踏み入れた。