腕に力が入って、ぎゅっと抱きしめられる。



「……っなに?」

ようやく出せた声は予想以上に震えてて。


「何がなんでも、守られとけ。
絶対に無理すんな」



いつになく真剣なその口調が、不思議と重さを含んでいた。


ただ、話題の1番重要な部分が見えてこない。

翼の優しさは痛いほど理解できるのに、妙に引っかかる。

話の筋が綺麗じゃない。


何か隠されてる?

直感的にそう思った。



「翼、やっぱりがんばってるね」



あたしのこと、わかりやすすぎって言うけど。

「わかりやすすぎだよ?」

翼だって同じじゃん。



「みくるにだけは言われたくねぇよ」

「うるさいなぁ」



少しは気持ち通じた?


存在を確かめるように、あたしは翼に力いっぱい抱きつく。

拒絶なんかさせてあげない。




帰り道、行き交う人が多いことも。

数メートル先を歩いていた太陽のことも、歩夢のことも忘れて。



「翼………っごめんね、ありがっ…と」


未だに涙は零れ続けた。